この記事の要点
- 3Dプリント品の本当の原価は材料費の3〜6倍になる。「材料費×3」の値付けは自分の時給をゼロ円にする計算
- 原価は「材料費+電気代+機材償却+失敗ロス+作業人件費+販売手数料+送料・梱包」の7項目で計算する
- 価格は原価からではなく「顧客にとっての価値」から決め、原価は下限チェックに使う
対象読者:これから売り始める方・すでに売っていて利益が残らない方/難易度:★★☆/読了目安:10分
「材料費300円だから900円で売れば儲かる」の間違い
ハンドメイド界隈でよく聞く「材料費×3」ルール。3Dプリント品にこれを当てはめると、ほぼ確実に時給換算で最低賃金を大きく割ります。実際に7項目で計算してみましょう。
原価の7項目 — 計算例つき
例:FDMで印刷する小物(印刷時間3時間、材料50g、販売価格2,000円、ハンドメイドECで販売)
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 材料費 | PLA 2,400円/kg × 50g | 120円 |
| ② 電気代 | 150W × 3h × 31円/kWh | 14円 |
| ③ 機材償却 | 本体6万円÷耐用2,000時間 × 3h | 90円 |
| ④ 失敗ロス | 失敗率5%(①+②+③の5%上乗せ) | 11円 |
| ⑤ 作業人件費 | 段取り+後処理+梱包20分 × 時給1,200円 | 400円 |
| ⑥ 販売手数料 | 販売価格2,000円 × 10% | 200円 |
| ⑦ 送料・梱包材 | 持ち出し分 | 250円 |
| 原価合計 | 1,085円 |
2,000円で売って粗利915円。1日に梱包まで含めて3個さばけたとして日当2,745円。これが「材料費120円の品を2,000円で売る」の現実です。逆に言えば、この計算ができていれば「いくらなら成立するか」「どこを効率化すべきか」が見えます。
見落としポイント解説
③ 機材償却 — 「もう買ったから無料」ではない
機材は使うほど寿命が減る消耗品です。本体価格を想定稼働時間(FDMなら2,000〜5,000時間が目安)で割り、1時間あたりのコストとして計上します。ノズル・ビルドプレート・ベルトなどの交換部品も年間数千円かかります。これを入れないと、機材の買い替え時にお金が残っていない事態になります。
⑤ 作業人件費 — 自分の時給をゼロにしない
最重要項目です。スライス、印刷開始、サポート除去、検品、撮影、出品、梱包、発送。「機械が働いている時間」ではなく「あなたが拘束される時間」に時給を掛けます。ここをゼロ円にすると、売れれば売れるほど疲弊する事業ができあがります。副業でも最低時給1,000〜1,500円は確保しましょう。
④ 失敗ロス — 歩留まりは利益率に直結する
印刷失敗、配送中の破損、検品ではじく個体。失敗率5%なら原価に5%上乗せ、20%なら20%上乗せです。失敗率を下げる設定調整・治具づくりは、そのまま利益率改善になります。
価格は「価値」から決め、原価は「下限」に使う
原価1,085円だから1,200円で売る、は間違いです。それは「原価積み上げ値付け」といい、価格競争に巻き込まれる典型パターンです。正しい順序は:
- 顧客にとっての価値から上限を探る — 誰のどんな困りごとを解決するか。代替手段(既製品・我慢)と比べてどれだけ良いか
- 原価計算で下限を確認する — この価格で売って、目標時給が確保できるか
- 下限を上回れないなら、売り方か商品を変える — 値下げではなく、付加価値(名入れ・セット化・BtoB転換)か工程効率化で解決する
まとめ
- 原価は7項目(材料・電気・償却・ロス・人件費・手数料・送料)で計算する
- 自分の作業時間に時給を付ける。ゼロ円時給は事業ではなく消耗
- 価格は価値から、原価は下限チェックに。下限割れは値下げ以外で解決する
次に読む:販路ごとの手数料と特徴の比較(準備中)、BtoB受託の単価相場(準備中)。すぐ使える計算テンプレート(スプレッドシート)は、メルマガ特典として準備中です → メルマガについて
