製造物責任法(PL法)入門 — 個人がモノを売るとき、何に責任を負うのか

この記事の要点

  • 製造物責任法(PL法)は、製品の欠陥で人がケガをしたり財産が壊れたりしたとき、製造者に無過失でも賠償責任を負わせる法律
  • 個人・副業でも「業として」製造・販売すれば対象になり得る。「知らなかった」「趣味の延長」は通用しない
  • 対策は「安全設計」「警告表示・取説」「PL保険への加入」の3点セット。年数万円の保険料は事業の必要経費

対象読者:これから製品を売るすべての方/難易度:★★☆/読了目安:12分

※本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は弁護士等の専門家にご相談ください(編集方針)。

目次

PL法とは — 「過失がなくても」責任を負う法律

製造物責任法(平成6年法律第85号、通称PL法)は、製造物の欠陥によって人の生命・身体・財産に損害が生じた場合に、製造業者等が損害賠償責任を負うことを定めた法律です。全文6条の短い法律で、e-Gov法令検索で読めます。

通常の損害賠償(民法709条)では、被害者が「加害者に過失があった」ことを証明する必要があります。PL法はこれを転換し、「製品に欠陥があった」ことを示せば、製造者の過失を証明しなくても賠償請求できるようにしました。作り手にとっては、それだけ重い制度だということです。

個人メイカーは対象になるのか

PL法の責任主体は「製造業者等」(第2条第3項)で、「業として製造、加工又は輸入した者」を指します。ポイントは3つあります。

  • 「業として」に会社である必要はない — 反復継続して販売していれば、個人でも「業として」に該当し得ます。ハンドメイドECで継続販売している状態は、まさにこれです
  • 3Dプリント品は「製造物」に該当する — 製造物=「製造又は加工された動産」。プリントした製品、レーザーカットした雑貨、いずれも該当します
  • 輸入販売者も「製造業者等」になる — 海外製品を輸入して売る場合、国内に製造者がいないため、輸入者が製造者と同等の責任を負います。海外キットの転売はこの点で高リスクです

なお、データを販売しただけの場合(購入者が自分で印刷)は「動産の引き渡し」がないためPL法の直接の対象にはなりにくいですが、民法上の責任が消えるわけではありません。

「欠陥」の3類型 — デジファブ製品での具体例

1. 設計上の欠陥

設計そのものが安全性を欠くケース。例:子ども向け玩具の突起が鋭利/小部品が外れて誤飲サイズ/強度不足のフックが荷重で破断して物を壊す。

2. 製造上の欠陥

設計は問題なくても、個体として欠陥があるケース。3Dプリントは層間接着のばらつき・微小な空隙など、個体差が出やすい製法です。積層方向と荷重方向の関係で強度が大きく変わることは、作り手が把握すべき製法特性です。

3. 指示・警告上の欠陥

使い方や危険性の表示が不十分なケース。例:「耐荷重2kgまで」「食品には使用不可」「PLAは高温の車内で変形します」と書いていなかった。個人メイカーが最も対策しやすく、最も怠りがちな欠陥類型です。

今日からできる3つの対策

対策① 安全側に設計する

  • 想定荷重の2〜3倍で壊れない設計にする(安全率)
  • 子どもが触れる可能性がある製品は、角の丸め・誤飲サイズ(直径39mm以下の部品)・外れやすい小部品を避ける
  • 積層方向を荷重に対して適切に。破断しやすい方向のテストを実施し、記録を残す

対策② 警告表示と取扱説明を付ける

  • 用途外使用の禁止(「本品は装飾用です。食品・乳幼児用途には使用しないでください」)
  • 材質特性の明示(耐熱温度、耐荷重、水濡れ可否)
  • 商品ページ・同梱カードの両方に記載し、記載内容を販売記録と一緒に保存しておく(訴訟時の証拠になります)

対策③ PL保険(生産物賠償責任保険)に入る

どれだけ対策しても事故はゼロになりません。最後の防波堤が保険です。個人事業主でも、年間数万円程度から生産物賠償責任保険(PL保険)に加入できます。商工会議所の会員向け制度、ハンドメイド作家向け保険、ネットショップ向けの包括保険など選択肢は複数あります。月商数万円の段階でも、対人事故1件で数百万〜数千万円の賠償があり得ることを考えれば、必要経費と考えるべきです。

よくある質問

Q. 「自己責任でお使いください」と書けば免責されますか?

A. されません。消費者契約法により、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効です(第8条)。免責文言に意味がないわけではありませんが、「書けば安全」ではなく、適切な警告表示・安全設計とセットで初めて機能します。

Q. 無料で配った物にもPL法は適用されますか?

A. PL法は「引き渡した」製造物が対象で、有償・無償を直接の要件にしていません。業としての活動に伴う配布(販促ノベルティ等)は対象になり得ると考えられています。

Q. 委託を受けて他人の設計データを印刷した場合は?

A. 印刷した側も「製造」に関与しているため、責任関係は契約と実態によります。受託時は「設計責任は依頼者、製造品質は受託者」のように責任分界を契約書で明確にしておくのが実務の基本です。

まとめ — 次のアクション

  • 個人でも継続販売すればPL法の対象になり得る。前提として受け入れる
  • 安全設計 → 警告表示 → PL保険の3点セットを販売開始前に整える
  • 設計・テスト・表示の記録を残す習慣が、万一のときあなたを守る

参考資料:製造物責任法(e-Gov法令検索) / 消費者庁 製造物責任法について

次に読む:PL保険の具体的な選び方と保険料相場(準備中)、電気を使う製品とPSE(準備中)。販売前の総点検には「販売前・法規チェックリスト」(メルマガ特典・準備中)をどうぞ。

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この記事を書いた人

3Dプリンター歴10年以上・元大手メーカー開発職。3Dプリンター本体・関連製品を販売するEC事業者として、企業・個人向けの導入支援やセミナーも手がける。Japan RepRap Festival(JRRF)副代表。VoronやVZBotなどオープンソース機のチューニングから最新市販機の検証まで、実機ベースで発信しています。

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