その材料、その用途で本当に使って大丈夫?出所と証明の話(入門)

その材料、その用途で本当に使って大丈夫?出所と証明の話

「同じPLAでしょ?」と思って買ったフィラメントで、コースターを作って売る。ここまでは問題になりにくいのですが、同じ気軽さで「食器」や「赤ちゃんが口に入れるおもちゃ」を作って売ろうとすると、話が変わります。ここで効いてくるのが材料の出所(どこの何という材料か)と、その用途で使ってよいという証明です。

定義:ここでいう「材料の出所」とは、使った樹脂・フィラメント・レジンがどのメーカーの、どの製品(グレード)で、どんな成分かを辿れる状態のことです(読み方:ざいりょうのでどころ/近い言葉:トレーサビリティ、対義語:出所不明・素性の分からない材料)。「用途適合」とは、その材料が意図した使い方(食品接触・肌接触・屋外・電気周りなど)に対して適合すると確認・証明された状態を指します。

なぜ「出所」と「証明」がセットで必要なのか

3Dプリントで売る場合、消費者から見れば「工場で作られた既製品」と同じ土俵に立ちます。もし食品に触れる用途なら食品衛生法、電気を使うならPSEなど、用途ごとの法規がかかります。 そしてこれらの多くは「作った人が安全性の裏づけを示せること」を前提にしています。裏づけの出発点が、材料の出所と用途適合の証明です。

具体例スマホスタンドやフックのような「触るだけ・食品に触れない・電気を使わない」小物なら、材料の証明を強く問われる場面は多くありません。一方、コーヒーを注ぐドリッパー、離乳食スプーン、屋外に置く表札などは、それぞれ「食品接触」「肌接触・口接触」「屋外耐候」という用途要求が乗ってきます。

「食品グレードのPLA」と「食品用途に使える製品」は別物

❌ 誤解「食品グレードの原料で作られたフィラメントだから、それで作った食器は食品用途OK」
✅ 正しくは原料が食品グレードでも、着色剤・添加剤・製造工程・積層構造・後加工まで含めて最終製品として適合するかは別問題です。材料メーカーが「この製品を食品接触用途に使ってよいと保証しているか」を、資料で確認する必要があります。

まず押さえる3つの問い

売る前に、最低限この3つを自分に問いかけてみてください。

⚠ 注意点①その材料は何という製品か言えるか(メーカー名・製品名・ロット)。②その材料に意図した用途向けの資料(適合宣言・データシート等)があるか。③自分の作り方(造形条件・後加工)がその用途要求を壊していないか。ひとつでも「分からない」があるなら、その用途で売るのはいったん保留が安全です。
Q. 出所が分かる材料なら、どんな用途でも使えますか?
いいえ。出所が分かることは出発点にすぎません。出所が分かったうえで、その用途に「適合する」と資料で確認できて初めて使える、という順番です。出所=用途適合、ではありません。
Q. 個人でハンドメイド販売する規模でも証明は要りますか?
販売規模の大小で法規の適用が消えるわけではないのが原則です。 少量でも食品接触・肌接触・電気周りの用途なら、用途ごとの枠組みは同じようにかかると考えて準備するのが安全です。

関連用途の具体的な進め方は、別記事「食品衛生法適合証明の取り方(材料メーカーに聞く)」で扱います。あわせてお読みください。

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。法令・基準は改正されることがあり、個別の製品・状況により結論が変わります。最終的な判断は所管官庁・登録検査機関・専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

3Dプリンター歴10年以上・元大手メーカー開発職。3Dプリンター本体・関連製品を販売するEC事業者として、企業・個人向けの導入支援やセミナーも手がける。Japan RepRap Festival(JRRF)副代表。VoronやVZBotなどオープンソース機のチューニングから最新市販機の検証まで、実機ベースで発信しています。

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