BtoB試作受託の始め方 — 単価相場の考え方と最初の1社の見つけ方

この記事の要点

  • BtoB受託はBtoC販売より単価が高く、リピートしやすい。ただし「製造業の商習慣」を知らないと受注できない
  • 個人が狙うべきは大手の量産案件ではなく、「今すぐ・少量・図面が完璧でない」案件——スピードと相談しやすさで勝つ
  • 最初の1社は「知り合いの現場の困りごと」から。ポートフォリオと対応範囲の明文化が営業資料になる

対象読者:受託で稼ぎたい個人事業主・副業の方/難易度:★★☆/読了目安:10分

目次

なぜ個人に受託のチャンスがあるのか

企業には「金型を作るほどではない」「試作屋に出すほどの予算も時間もない」少量・急ぎのニーズが恒常的にあります。治具1個、廃番部品の代替3個、展示会前のモックアップ——大手試作サービスは見積もりに数日、個人なら「今日データをもらって明日渡す」が可能です。この機動力こそ個人の商品です。

単価の考え方 — 「時間単価×拘束時間」で見積もる

BtoCの値付け(原価計算)と違い、受託は技術サービス業の見積もりです。材料費に印刷時間をかけるだけの見積もりは、自分の設計・段取り・検品・やり直し対応をタダにする計算になります。

  • データ支給・出力のみ — 機械時間+段取り・検品の実働で見積もる。少量なら1個数千円〜が相場観
  • 設計込み(採寸・モデリングあり) — 設計工数を時間単価(数千円/時〜)で別建てに。ここを無料にすると疲弊する
  • 継続案件(治具の定期供給等) — 単価を下げる代わりに月次発注量で担保。事業の土台になる

「安くしないと取れない」は多くの場合誤解です。BtoBの判断基準は価格より納期の確実性・図面の読める相手か・相談のしやすさ。値決めで自分を安売りするより、返信の速さと納期遵守で信頼を積む方が強い。

受注前に整える4点セット

  1. 対応範囲の明文化 — 方式(FDM/光造形)、最大サイズ、対応材料、公差の目安(±0.2mm等)、得意分野。「できないこと」も書くと信頼される(公差参照)
  2. ポートフォリオ — 治具・機構部品・採寸複製など「事業者の困りごとを解決した」事例を写真+課題+解決の形式で。守秘案件は抽象化して掲載可否を確認
  3. 見積書・請求書の型 — 会計ソフトで発行できる。インボイス登録は取引先が課税事業者なら求められることが多い
  4. 取引条件のひな形 — 検収条件、支払サイト、データの権利保証(知財リスク)、機密保持。1枚の「取引条件書」で十分始められる

最初の1社の見つけ方

  • 身近な現場から — 勤務先の別部署、知人の工場・店舗・農家。「治具・補修部品・什器で困っていることないですか」の一言から始まる
  • 地域の商工会議所・産業支援センター — 中小企業の「ちょっとした試作」相談は行き場がなく、対応できる個人は重宝される
  • SNS・ブログでの技術発信 — 「◯◯を採寸して複製した」記事は、同じ悩みの担当者が検索して見つけてくれる営業資産になる
  • 受託マッチングサイト — 手数料はかかるが実績づくりの初期には有効。評価が貯まったら直取引へ

受託でやりがちな失敗

  • 公差を確認せず受ける — 「はまらない」は検収NG=作り直し。図面がなければ勘合相手の現物を借りる
  • 用途を聞かない — 強度・耐熱・安全性の要求は用途で決まる。人が触る物・食品関連・電気周りは法規の確認も
  • 無限修正を受ける — 「設計込み◯回まで、以降は時間課金」を最初に合意する

次に読む:原価計算 / 品質管理(用語) / リバースエンジニアリング入門

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この記事を書いた人

3Dプリンター歴10年以上・元大手メーカー開発職。3Dプリンター本体・関連製品を販売するEC事業者として、企業・個人向けの導入支援やセミナーも手がける。Japan RepRap Festival(JRRF)副代表。VoronやVZBotなどオープンソース機のチューニングから最新市販機の検証まで、実機ベースで発信しています。

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